看護師さんの機嫌の善し悪し

2012.02.08

自分なりの努力だけはアピールしたくて、私は言いました。「雨が嫌いだから、私、傘をいっぱい持ってるんです。少しでも雨の日を楽しくしようと思って。夫からは、傘屋でもやるのかって言われてます」「まじめだなあ。楽しくない日や、嫌いなものなんて、あってもいいじゃない。その日は、仏頂面して暮らせばいいじゃない」こう言って、さらに大きな声で笑った彼ですが、私に気を遣ってか、「まあ、看護師さんじゃそうはいかない、か。ただでさえ気が滅入ってる病人相手じゃ、明るい笑顔を振りまかなくちゃならないんだろうなあ。俺だって、看護師さんの機嫌の善し悪しには、ちょっとナーバスだもんね」と付け加えました。そして少し考えてから、突然真顔でこう言ったのです。「でも、やっぱり、嫌だ、って気持ちを大事にすることも大切なんだよ。嫌なことをするのはそりゃあ嫌だけど、嫌なことを無理に嫌じゃないって思うことの方が、もっと嫌じゃない?嫌なことを嫌と思いながら、嫌々やる。プライドが傷つくかもしれないけど、嫌と思う気持ちをなくすよりはいいんだよ、その方が。嫌な仕事やる時は俺、いつもそう自分に言い聞かせてる。建築やってて、『本当にこんな建物でいいのか』みたいな注文してくる客っているんだよね。でも、生活のためにはそれだってやらなきゃならない。それが嫌じゃなくなる方が、建築家としてはまずいって思うんだよね」彼の言葉は、組織の人間として生きる私の心にも、非常に響くものでした。嫌なことをどれだけ嫌と思いながら、やり続けて、なおかつ人柄が悪くならないか。これは、雨の日の笑顔と並んで、私か彼からもらった大きな宿題です。