現代スーツの聖地・ナポリ

2011.07.09

本場サヴィルロウと、着物文化の影響を受けてきた我が国のスーツにとっても九〇年代のはじめごろから新たな手本が出現した。それが、ナポリ仕立てである。ナポリは一八世紀にポンペイ遺跡が発見されて以降、ヨーロッパ人の避寒地として人気を集め、別荘を持つのが流行した。このときから異文化同士がナポリで交錯することとなった。これに伴って、サヴィルロウ仕立ての技術も海を渡ったといわれている。しかし、雪が降っただけでトップニュースになる、温暖でリゾート感あふれるナポリの気候と、楽天的でリラックスできることを身上とするナポリ人の気性があいまって、ナポリ仕立ては独自の進化を遂げた。それは軽く、やわらかく、動きやすい仕立てだ。見た目にも威厳と格式を感じさせるどころか、肩の力が抜けた、カジュアル感漂うスーツなのである。九〇年代に入るまでは、ナポリ仕立ては、どちらかというと「田舎紳士のスーツ」「シワやステッチが多くて冴えないスーツ」という評価で、世界のスタンダードになることはないと思われていた。しかし、ナポリ注文服の技術を随所に取り入れたナポリ製既製服が誕生したのをきっかけに、世界的なブームになった。

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