形成外科医を告訴するよりメーカーを告訴する方が都合がいい、実際的な理由があった。まずローテンバーグよりブリストルマイヤーズ・スクィブの方が、十分な資力があると見なしてよい。第二に、陪審は、医師よりも非個人の巨大組織に同情しないのが普通だ。ローテンバーグは初めは被告として名前を挙げられていたが、ジョンソンは公判の前に彼に対する賠償請求を取り下げた。ローテンバーグは最後にはジョンソンとオクィン側で証言した。オクィンの共同経営者であるリチャード・ラミナック(RichardLaminack)が、形成外科医の代わりにメーカーを告訴するのが有利だと最初に気がついたのは1988年だった。当時の「月刊テキサス」(TexasMonthly)でのインタビュー記事には、一人の外科医がラミナックにこう言ったと書かれている。あなたが私を告訴しようとしているのは知っているが、あなたさえその気なら私はあなだの強力な証人になれる。1件の医療過誤訴訟はこうして製造物責任訴訟へと転換した。しかしながらテキサスで訴訟を起こす場合、最初はメーカーとともに外科医の名前を挙げ、後で外科医の名を取り下げるのが最良の方法だった。この戦略的行動をとることによって、連邦裁判所の代わりに州裁判所でその訴訟を公判に付することが確実になる。もし手術がその州の中で行われ、訴訟に外科医が含まれている場合は、州の訴訟になるのだ。裁判所が悪名とどろくほど原告弁護士に友好的なテキサスでは、これは非常に有利な点だった。メーカーとともに医者を訴えたのち、医者の協力を得る見返りとして医者への訴訟を取り下げるやり方は、豊胸材訴訟では広く認知されている。医者の協力で、原告の主張は非常に強固になる。メーカー自身は、形成外科医が訴えられた時に彼らを補償するのを拒否したことで、逆に外科医を原告側につかせてしまった。これと対照的なのが自動車会社だ。慣例として自動車会社は訴訟費用を自動車ディーラーに補償する。豊胸材メーカーの節約法はきわめて近視眼的だ。おかげで形成外科医は原告弁護士の意のままになるだろう。形成外科医にとっては、原告と協力するか、彼ら自身が訴えられる危険をおかすかの二つに一つしかないからだ。
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